トイレに行きたいと思ったら我慢しきれなくなる恐怖！過活動膀胱について

そもそも過活動膀胱ってどんなもの？

過活動膀胱は、
1.急に尿をしたくなってがまんが難しいことがある
2.がまんできずに尿をもらすことかある
3.尿をする回数が多い
1～3で一つでも当てはまるものがあれば過活動膀胱の可能性が考えられるといわれています。
尿トラブルの1つで、尿が膀胱に十分たまっていなくても、自分の意思とは関係なく膀胱が勝手に収縮してしまいます。その結果として急に我慢できないような尿意が起こる（尿意切迫感）、トイレが近い（頻尿）が表れます。
日本排尿機能学会によると、40歳以上の過活動膀胱がある方は14.1％、推定患者数1000万人といわれています。40歳以上の男女の8人に1人というデーターもあるくらいです。
過活動膀胱そのものが生死に関わるということはありません。しかし、コントロールできない尿意によりトイレの不安から外出を控えたり、尿漏れにより自信をなくしたりと生活の質（QOL）を著しく損なってしまうことが特徴といえます。尿トラブルで困っていても恥ずかしくて相談出来ない、病院を受診しないということが多いという現状もあります。

我慢できない尿意

さっきまで何ともなかったのに突然強い尿意が襲ってきて我慢しているつもりなのに漏れそうになったり、漏れてしまう。
この状態は、恐怖でしかありません。
焦ってトイレにかけ込んだのにあと一歩というところで漏れてしまったり、下着を下ろしている最中に漏れてしまう。
一度でも尿漏れを経験してしまうとまた同じような尿漏れになってしまったらどうしようと不安・心配が頭から離れなくなります。尿意コントロールできないということは、心理的にとても大きなストレスを抱え込むといっても過言ではありません。
普段だったら膀胱に尿が溜まっている最中トイレを我慢ができるのですが、過活動膀胱の特徴として我慢できない尿意が襲ってくる点です。
私自身、重度の過活動膀胱の時は、そんなに尿が溜まっていないにもかかわらず急に尿が押し出されるように漏れてしまう経験をしました。

トイレの回数が多い

日中1日に8回以上、夜間1回以上トイレに行くことを頻尿といいますがトイレの回数が多くなります。
強い尿意を催すにもかかわらず、1回の排尿量が少なく、何回もトイレに行くという特徴がみられます。
私たちの身体は、通常、200～300mlほど膀胱に尿がたまると、尿意を感じます。
その尿意を感じるシステムというのは、血液が腎臓でろ過をされ尿管を通って膀胱に尿が流れ込み尿がたまってくると膀胱の内圧が高くなり、膀胱の壁が引き伸ばされます。
引き伸ばされると膀胱の壁内にある伸展受容器というセンサーが感知しその刺激が骨盤神経を通じて脊髄を上に向かっていき脳内の脳幹にある橋という部分の排尿中枢と大脳皮質に伝えられ尿意を感じています。
しかし、過活動膀胱の尿意は、膀胱に一定量の尿が溜まっていないうちから何度も急に尿意を感じてしまうという特徴があります。
そのため、トイレの回数が多くなってしまいます。

膀胱が収縮するメカニズム

一定量の尿が膀胱に溜まりそのサインが大脳皮質に伝わって、排尿することを決定すると、脳内の橋という部分にある排尿中枢に出されていた「尿を溜めておくように」という命令が解除されます。すると脳からの信号により膀胱の筋肉は収縮し、内尿道括約筋が弛み排尿の準備が整います。尿を出そうとする準備にはいると膀胱は、収縮を始めます。
膀胱の収縮するメカニズムを少し詳しくみていくと、神経と膀胱の筋肉の間に神経・筋接合部というところがあります。そこからアセチルコリンという神経伝達物質が放出され末梢神経で働きます。正常な膀胱では、排尿時に神経からアセチルコリンが放出され膀胱の筋肉に引っ付き筋肉を収縮させています。このアセチルコリンが過剰に出ていて、いつも収縮するような状態となったのが過活動膀胱といわれています。

過活動膀胱の原因

過活動膀胱の原因は、さまざまだといわれています。
脳血管障害、パーキンソン病、多系統萎縮症、認知症などの脳や脊髄損傷、多発性硬化症、脊髄小脳変性症、脊髄腫瘍、頸椎症、後縦靭帯骨化症、脊柱管狭窄症などの脊髄といった中枢神経の障害が原因でおこるものを神経因性。
男性の前立腺肥大による尿道閉塞や女性の骨盤底筋障害、加齢による膀胱機能の変化などが原因でおこるものを非神経因性とあるそうです。
しかし、過活動膀胱には、原因不明のものも多いとあります。
過活動膀胱の診断は、質問票「過活動膀胱症状質問票」を用いたりして自覚症状に基づき判断されています。よって尿意切迫感の症状があれば過活動膀胱と診断され、さらに頻尿や切迫性尿失禁を伴っていればより確実とされています。

過活動膀胱の対処方法

過活動膀胱の対処方法として泌尿器科を受診されるとまず薬物療法を行うのが一般的とされています。
薬物療法・・・膀胱の収縮を抑えて、尿意切迫感を改善する薬剤や蓄尿時の膀胱の拡張を促進する薬剤で、尿意切迫感も改善するものなどが用いられます。
しかし、薬物療法は症状を軽減させる対症療法だと考えられます。
薬物療法の他には、
電気刺激治療・・・電気や磁気で刺激を与えて、骨盤底筋の収縮力を強化したり、膀胱や尿道の神経のはたらきを調整したりする治療
ボツリヌス毒素の膀胱壁注入治療・・・薬物治療で改善が得られない過活動膀胱（切迫性尿失禁）に対し、欧米で行われている、尿道から内視鏡を挿入し、膀胱内から膀胱壁にボツリヌス毒素を注入する治療。膀胱壁に注入されたボツリヌス毒素が膀胱の勝手な収縮を抑えて切迫性尿失禁を改善とあります。
仙骨刺激治療・・・欧米で従来行われている治療法。日本では平成29年9月に健康保険適用となった新しい治療法になるそうです。薬剤治療により改善が得られない過活動膀胱による切迫性尿失禁が適応。仙骨孔（臀部）から針金状の電極を差し込んで膀胱を収縮させる神経の傍に置きます。そして、臀部の皮下に心臓のペースメーカーのような電気刺激装置を埋め込み、埋め込んだ電極を常に刺激します。これにより、膀胱の神経が常に刺激され、過活動膀胱を抑制して尿失禁を改善する方法。
などがあるそうです。

副作用のない過活動膀胱の対処方法（1）

過活動膀胱の副作用のない対処方法をご紹介します。
過活動膀胱によくみられる頻尿・尿意切迫感・切迫性尿失禁に対して、生活面で取組める方法です。
過剰な水分摂取やカフェイン摂取に気をつける。
健康な成人（25~55歳）の場合、1日に最低限必要な水分量の簡易計算法は、体重（kg）×約35（ml）＝1日の必要水分量（ml）です。1日の必要水分量のうち、食事などからの摂取が20〜30％、残りの70〜80％が飲み物といわれています。過剰に水分を摂取すると多飲多尿の原因になります。１日に必要な水分量を一度にたくさん摂取するのではなく、何回にも分けて気がつけば一口ずつ頻繁に摂取することをおすすめします。
またカフェイン飲料には、利尿作用があります。自分は、カフェインを摂取するとトイレに行きたくなると思われる方は、出かける前などはひかえてノンカフェインのものにするなど気をつけるといいと思います。

副作用のない過活動膀胱の対処方法（2）

トイレの心配をなくすという方法です。（心因性を取り除く）
少し余裕をもって早めにトイレに行く。外出するときなどは、前もってトイレの位置を確認しておく。トイレの習慣を変更することにより、切迫性の尿トラブルを防止しやすくなると考えられます。
しかしこの方法を日常的に習慣づけてしまうと、膀胱にしっかりと尿が溜まる前に前もってトイレに行くことが当たり前になります。すると膀胱容量が小さくなり膀胱の伸びが悪くなる原因になります。できれば外出中のみの対処法とするなど習慣化しないように気をつけていただきたいです。
またご高齢者の場合は、トイレ環境の整備や着衣の工夫など、日常生活で工夫できることもあります。
トイレまでの動線を行きやすく整える。着衣もトイレに入ってすぐに排尿しやすいものを着るなどです。

副作用のない過活動膀胱の対処方法（3）

膀胱コントロールをご紹介します。
膀胱の内面は移行上皮という粘膜で覆われていて、膀胱が空の状態ではたくさんのシワが見られます。膀胱の中に尿が充満してくると、膀胱壁が伸びてシワが消え尿をしっかり溜められますます。このように膀胱は本来、非常に伸縮性に富んだ臓器です。良い膀胱は、しっかりと尿を溜められてすっきりと出し切れる膀胱です。
膀胱コントロールは、少しずつ排尿間隔を延長することにより膀胱容量を増加させる尿意コントロール方法です。
軽い尿意が起こったら、外尿道括約筋を巾着の口を締めるみたいにギュッと締めその刺激を脳へ送りましょう。それから、少しトイレ以外のことに気をそらします。
これは、「会陰排尿筋抑制反射」といって起こった尿意を身体の反射を利用して尿意を抑える方法です。
「会陰排尿筋抑制反射」を用いて、尿意コントロールしながら少しずつ排尿間隔を延ばしていき溜まる膀胱を目指します。

副作用のない過活動膀胱の対処方法（4）

骨盤底筋トレーニングをご紹介します。
骨盤底筋とは、恥骨・尾骨・座骨を結ぶ胴体の底を支えているハンモック状の筋肉です。骨盤内にある膀胱や子宮、直腸などの重たい臓器を下から支えて正しい位置に保ったり、尿道を締めて尿漏れを防ぐなど排尿や排便をコントロールするとても重要な役割を担っています。その骨盤底筋が弱まりゆるむことで尿意切迫や頻尿がおこります。
私の考案した骨盤底筋トレーニング
は、骨盤底筋のバランス・筋力向上を促すために、前・中・後の３か所の各括約筋を締め3ゾーンそれぞれを引き上げるように息を吐きながらトレーニングします。
前の括約筋を締めるトレーニングは、「会陰排尿筋抑制反射」と膀胱コントロールに繋がるものです。
骨盤底筋トレーニングは、腹圧性尿失禁に対して広く行われますが、過活動膀胱にも30～70％有効といわれています。

尿漏れに３か所３回の骨盤底筋トレーニング「イントレ」

まとめ

過活動膀胱のように尿トラブルがあるとトイレのことが心配で電車や車に乗れない、外出を控えるようになる。
就寝中に何度もトイレで目が覚め、睡眠不足になるなど日常生活の質を著しく低下させます。
そのまま放置せずに対処することが大切です。
自身の子宮脱・腹圧性尿失禁・切迫性尿失禁・過活動膀胱・頻尿・夜間頻尿・気にしすぎて心まで病んだ経験からさまざまなアドバイスをおこなっています。尿トラブルや骨盤底筋トレーニングなどでわからないことがあるときは、お気軽にご相談ください。
人生１００年時代、どのような生き方をするかは、やはり自分にかかっています。
尊厳の守られた生き方を手に入れ、尿トラブルによるゴミを出さない身体作りをおひとりおひとりが取組んでくださることを願っています。