高齢化社会における排尿トラブル早期対策

日本の高齢化は世界に類を見ないスピードで進行しています。
2024年、65歳以上の高齢者の割合は29.3%を占め、超高齢社会の様相を呈しています。
この急速な高齢化に伴い、排尿トラブルを抱える方々も急増しています。
厚生労働省のガイドラインによると、60歳以上の50％以上が尿失禁を経験しているとされ、その数は年々増加傾向にあります。
この数字が示すのは、排尿トラブルが特別な問題ではなく、高齢者の半数以上が直面する一般的な課題であるという現実です。
にもかかわらず、恥ずかしさや知識不足から適切な対策が取られていないケースが多く、多くの高齢者とその家族が孤立した状態で問題を抱え込んでいます。

「ちょっと漏れたかも…」その一瞬の出来事が、実は心や生活に大きな影響を与えることがあります。
外出が不安になったり、人と会うのを避けるようになったり。仕事や趣味への意欲も薄れてしまうことも少なくありません。
排尿トラブルは、体だけでなく心の自由までも縛ってしまう、非常に大きな問題なのです。

私たちが見過ごしがちな事実として、排尿トラブルは深刻な環境問題と直結しているという点があります。
高齢者の排泄ケアに使用される使い捨ての吸水パッドや紙おむつは、日本国内だけでも年間数十万トンもの廃棄物を生み出しています。
これらの製品の多くは、吸水性を高めるためにプラスチック素材や化学物質を含んでおり、自然分解されにくい特性を持っています。
その結果、焼却処理による二酸化炭素排出増加や、不適切な処理による水質汚染などの環境リスクを高めています。
特に注目すべきは、適切な排泄ケアの早期介入によって、これらの使い捨て製品の使用量を大幅に削減できる可能性があるという点です。
排泄機能の維持・改善を目指した取り組みは、単に高齢者のQOL向上だけでなく、環境負荷の軽減にも直接貢献する重要な社会的取り組みと言えるのです。

原因は一つではありません。加齢による筋力低下、出産経験、ストレス、生活習慣の乱れ…。これらが複雑に重なり合って「排泄の自立」を揺るがします。
しかも「年齢のせいだから」と見過ごしてしまう方が多いのも特徴です。原因を正しく知ることが、第一歩になります。

大切なのは「気づいたらすぐに取り組むこと」
骨盤底筋のケアや、正しい排泄姿勢、日々の水分の摂り方など、ちょっとした工夫で大きく変わります。
私が考案した「イントレ®︎」もその一つ。身体の中に“お守り”を持つように、自分自身で守る力をつけることができます。

排泄の自立度が高まることで、高齢者の外出頻度や社会活動への参加が増加します。
これにより、フレイル予防や認知機能の維持、生きがいの創出につながり、健康寿命の延伸に貢献します。
地域の担い手として高齢者が活躍できる社会の実現にも寄与します。

排泄の課題は、個人の努力だけで解決するものではありません。
地域や家族、社会全体が関わるテーマです。講座やワークを通じて「誰もが安心して排泄できる社会」を目指すことは、SDGsやゴミ削減につながります。
みなさんと一緒に、より良い未来を築いていきたいです。

「自分にはまだ関係ない」と思っている方も多いでしょう。
しかし、排泄トラブルは性別や年齢を問わず、誰にでも訪れる可能性があります。
だからこそ“知っておくこと”が大切です。知識と方法を持っているかどうかが、その後の人生の質を大きく左右します。

排泄は人間の尊厳に直結する、とても大切な営みです。トラブルを「恥ずかしいこと」と隠すのではなく、正しい知識とケアで向き合えば、未来は変えられます。
排尿トラブルは人生の終わりのサインではなく、むしろ「自分を見直すチャンス」です。あなたも今日から一緒に一歩を踏み出してみませんか。